「古いけど使えている」は危ない?
システム老朽化のリスクと解決策
2025.06.27/ 投稿日 2025.06.27
最終更新日
INTRODUCTION :
「このシステム、まだ動いているし、特に問題もないから、しばらくはこのままでいいだろう」
そんな言葉を聞いたことのある経営者やマーケティング担当者は多いのではないでしょうか。
導入してから10年、20年が経過していても、日々の業務を支えるシステムが問題なく動いているように見えれば、つい現状維持を選びたくなるものです。
しかし、こうした「古くて使えているシステム」には、目に見えない大きなリスクが潜んでいます。
システム老朽化は、故障のようにすぐには気づけない分、対応が遅れがちですが、放置すると企業の根幹を揺るがす問題へと発展する恐れがあります。
このコラムでは、システム老朽化がもたらすリスクを具体的に解説し、経営層やマーケティング部門がとるべき現実的な解決策を提案します。
老朽化の本当の意味
まず誤解してはならないのは、「老朽化=壊れている」ではないということです。
ここで言う老朽化とは、以下のような状態を指します
・導入から長年経過し、当初のビジネス要件と現在の業務が乖離している
・システムを構成するソフトウェアやOSのサポートが終了している
・開発に関わった人材が既に退職しており、知見が社内に残っていない
・他のツールやサービスとの連携が難しく、新しいビジネス展開を阻む要因になっている
つまり、動いてはいるが、将来にわたって安心して使い続けるには不安がある状態です。
たとえるなら、「エンジンオイルを一度も交換せずに10万キロ走った車」を使い続けるようなもの。
今は動いていても、いつ重大なトラブルが発生するかわからない、極めてリスキーな状況です。
老朽化による5つの深刻なリスク
-
セキュリティリスクの増加
サポートが終了したシステムは、セキュリティ更新がされないため、既知の脆弱性を突かれやすくなります。
特に、近年増加するランサムウェアや標的型攻撃の格好の標的になります。 -
トラブル発生時の復旧困難
古い言語やアーキテクチャで構築されたシステムは、トラブル発生時に対応できる人材が少なく、復旧までに時間とコストがかかります。
最悪の場合、完全復旧ができないことも。 -
業務効率の低下
時代に合わないUIや機能制限のあるシステムは、社員の業務効率を大きく損ないます。
マーケティング部門であれば、必要な顧客データの抽出や分析が困難で、データドリブンな戦略が実行しづらくなります。 -
新規事業・サービスとの非互換性
APIが存在しない、クラウド連携ができないといった技術的制約は、新しい施策や事業展開を妨げます。
マーケティングオートメーションの導入なども、基幹システムが対応できなければ絵に描いた餅です。 -
法令・ガイドラインへの非対応
個人情報保護法やGDPRなど、年々厳しくなる法令や業界基準に対応できず、結果的に法令違反となるリスクもあります。
特に顧客情報を扱う部署にとっては致命的な問題です。
なぜ経営層の判断が遅れるのか?
これだけのリスクがあるにもかかわらず、老朽化したシステムの刷新が後回しにされるのはなぜでしょうか。
背景には、「見えにくさ」と「コスト感覚」の問題があります。
システムの問題は、日々の業務の中では表面化しにくく、特に経営層の目には届きにくいのが実情です。
また、システムの刷新は短期的にはコストがかかるため、つい目の前の利益を優先して先送りされがちです。
解決策:段階的なモダナイゼーションと体制づくり
システムの老朽化への対策は、一朝一夕では実現できません。
だからこそ、段階的に、計画的に進めることが重要です。以下は現実的な5つのステップです。
-
棚卸しと現状評価
全システムの使用状況、依存関係、セキュリティ状況などを洗い出し、リスクの可視化を行います。 -
リスクベースで優先順位を決定
全てを一気に刷新するのは困難なため、影響範囲や業務重要度、セキュリティリスクなどに基づいて、対応の優先順位をつけます。 -
部分的なクラウド移行やAPI化
特に顧客管理、データ分析、マーケティング領域は、他部署との連携も多いため、先行してクラウド化やSaaS活用を進めると効果的です。 -
ドキュメント整備とナレッジの共有
ブラックボックス化を防ぐために、既存システムの仕様書や運用手順を整備し、若手社員への引き継ぎも含めた教育を行います。 -
経営層の関与と社内意識の醸成
最も重要なのは、IT部門任せにせず、経営層自らがこの問題を“経営課題”として捉えることです。
社内での意識改革なくして、持続可能なIT戦略は描けません。
終わりに:未来の成長を阻む“静かなリスク”に向き合おう
システム老朽化は、目に見えにくいがゆえに、企業にとって最も見過ごされやすいリスクの一つです。
特に経営者やマーケティング担当者のように、日々戦略や施策の最前線に立つ人こそ、システムの現状に無関心ではいられません。
変化の激しい時代において、柔軟なシステム基盤を持つことは、競争優位の大きな要素となります。
「古いけど使えている」ではなく、「新しくて未来に備えている」企業へ。
今こそ、次の一手を打つときです。
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