COLUMN 09

ITシステムのモダナイゼーションとマイグレーション、その違いは?

最終更新日 2024.12.25投稿日 2024.12.25

コラム07

INTRODUCTION :

現代のビジネスにおいて、ITシステムの刷新はもはや避けられない課題です。
急速な技術の進歩、クラウドの普及、デジタル変革(DX)の必要性から、企業は自社のIT基盤をどのように最適化すべきかを検討しています。
そこでよく聞かれるのが「モダナイゼーション」と「マイグレーション」という言葉です。
しかし、これらの用語が何を意味し、どのように違うのか、明確に理解できていないケースも多いでしょう。
今回は、経営者とIT担当者が意思決定の際に役立つよう、これらの概念について整理します。

モダナイゼーションとは?

モダナイゼーション(Modernization)とは、既存のシステムや技術を現代の標準に合わせて刷新することを指します。
多くの企業が運用している古いシステム(いわゆるレガシーシステム)は、ビジネスにとって重要な役割を果たしている一方で、技術的には時代遅れになり、保守が難しくなっています。
モダナイゼーションは、全体を完全に作り直すのではなく、既存システムの機能や構造を部分的に改良・再設計し、最新の技術やアーキテクチャに適応させるプロセスです。
例えば、オンプレミスで動いている20年前のシステムを、クラウド対応にアップグレードすることや、モノリシックなアプリケーションをマイクロサービス化して柔軟性を持たせることなどが、モダナイゼーションの一例です。
このアプローチは、既存のビジネスプロセスやデータフローを維持しつつ、現代の技術を活用してシステムの性能や保守性を向上させるという利点があります。

マイグレーションとは?

一方で、マイグレーション(Migration)は、システムやデータをある環境から別の環境へ移行するプロセスを指します。
多くの場合、オンプレミスのサーバーからクラウド環境への移行が代表的な例ですが、他にも異なるプラットフォーム間のデータ移行や、古いシステムから新しいシステムへのリプレースなどが含まれます。
マイグレーションの主な目的は、運用コストの削減、システムの可用性やセキュリティの向上、拡張性の確保などです。システムそのものを大幅に改変することはなく、運用基盤を変えることで得られるメリットを重視します。
そのため、マイグレーションは比較的短期間で実施できることが多いですが、移行するデータの整合性やセキュリティ対策には十分な注意が必要です。

モダナイゼーションとマイグレーションの違い

モダナイゼーションとマイグレーションは、どちらもシステムの進化に向けたアプローチですが、アプローチの焦点が異なります。

  • ・ モダナイゼーションは、既存システムのアーキテクチャそのものを改良し、現代の技術トレンドや業務ニーズに合わせて進化させることを目指します。これはシステムの内部構造や動作の「仕組みを変える」作業です。
  • ・ マイグレーションは、システムやデータを異なるプラットフォームやインフラに移行することを主な目的とし、基盤を変えることで利便性やコスト削減を図るアプローチです。これは「場所を変える」作業と言えるでしょう。

つまり、モダナイゼーションはシステムを最新の技術に適応させることで価値を高め、マイグレーションはインフラや運用環境を効率化することを目指します。

どちらを選ぶべきか?

企業がどちらを選ぶべきかは、ビジネスの状況やIT資産の現状に依存します。
例えば、企業が持つレガシーシステムが時代遅れで、頻繁に新しい要件や市場変化に対応する必要がある場合は、モダナイゼーションを選択するのが良いでしょう。
システム全体を再構築せずとも、部分的な改良や再設計を行うことで、ビジネスの変化に迅速に対応できる柔軟なIT基盤を構築できます。

一方、現行システムがまだ十分に機能しており、大規模な改修の必要はないものの、運用コストを削減したり、クラウドへの移行による拡張性を確保したりしたい場合は、マイグレーションが適した選択肢です。

モダナイゼーションとマイグレーションの両立

実際には、モダナイゼーションとマイグレーションは相互補完的な関係にあります。
多くの企業が、まずはオンプレミスからクラウドへのマイグレーションを行い、その後にシステムの一部をモダナイズするというステップを取っています。
これにより、初期段階ではインフラの効率化を実現し、次の段階でシステムの柔軟性や性能を向上させることが可能です。

たとえば、まずオンプレミスのシステムをクラウドへ移行することで(マイグレーション)、運用コストや設備の管理負担を軽減し、続いてアプリケーションのアーキテクチャをモダナイズすることで、パフォーマンスや拡張性を高めるといった手順がよく取られています。

経営者とIT担当者への提言

経営者は、ITシステムへの投資がどのような形でビジネスに寄与するかを評価するため、投資対効果(ROI)や長期的な運用コストの削減を重視する必要があります。
一方、IT担当者は、技術的なリスクやシステムの安定性を確保しつつ、タイミングを見極めてモダナイゼーションやマイグレーションを実行する計画を立てることが求められます。

まとめ

モダナイゼーションとマイグレーションは、どちらもITシステムの進化において重要なアプローチです。
企業は自社の現状と将来のニーズをよく理解した上で、どちらのアプローチが最も適しているかを判断することが必要です。
適切な戦略を選択すれば、ビジネスの成長を支える堅牢で柔軟なIT基盤が構築できるでしょう。モダナイゼーションとマイグレーションを組み合わせることで、効率的なIT運用と持続可能なビジネス成長を実現することが可能です。

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